名古屋高等裁判所 昭和26年(う)427号 判決
依つて按ずるに、原審引用挙示の中野信夫に対する裁判官の証人尋問調書の記載に依ると、被告人は自己の地位を利用して他の一名と共に右中野につきまとい、因つて原審判示の饗応を為さしめた外、同人から金二千円の交付を受けたこと、並に同人の右出損は被告人等の地位即ちチンピラであることを惧れた為であることは之を認めるに充分である。依つて按ずるに、凡そ恐喝罪に於ける脅迫の観念は、相手方に畏怖の念を生ぜしめるに足る原因を与へることを意味するのであるから、粗暴な言語、態度等は勿論、自己の地位を利用する場合に於ても成立するのである。故に被告人が所謂チンピラと称し、常に粗暴な行動に出る者であることを知悉して居る者に対し、酒食の饗応並に金員の要求を為した行為は、反証なき限り、被害者に於て生ずる畏怖の念を利用したものと謂ふの外なく、脅迫に該当することは勿論であるから原審には何等事実の誤認がない。